美容師の働き方・年収・技術
あなたはどう?美容師に向いている人、向いていない人の特徴とは?
2021.07.01 UP
美容師になるまでの流れとは?資格や下積みが必要!
美容師になるために必要なのが【美容師国家資格】です。国家試験を受ける権利を得るためには、厚生労働大臣指定の専門学校を卒業する必要があります。
昼間課程で2年、通信課程で3年間、必要課程を修了することで、国家試験を受けることができるようになります。
美容師国家試験
美容師国家試験は筆記・実技の2つに分けられ、筆記試験は3月・9月に、実技試験は2月・8月に実施されています。
筆記試験
試験は100分、50問で5教科9科目から出題され4択マークシートで回答します。100点中60点で合格となりますが、1科目でも0点を取ってしまった場合には不合格となってしまいます。
試験内容は
- 関係法規、制度
- 衛生管理(公衆衛生、環境衛生、感染症、衛生管理技術)
- 美容保険(人体の構造及び機能、皮膚科学)
- 美容の物理、化学
- 美容理論
筆者が専門学校で学んだ内容は、授業の半分がいわゆる【理科】の科学・物理・生物の内容でした。正直言うと「一体これが美容師の仕事に役立つのだろうか…」と思いながらの勉強でした。
しかし、実際に美容師として現場に出てみると、学校で学んだ内容が大いに役立ちました。得意になる必要はありませんが、知っていた方が後に役立つと捉え、積極的に学ぶことをおすすめします。
実技試験
実技試験は減点方式で第一課題では減点30点まで、第二課題では減点40点以下が合格となります。そして技術とは別に衛生実技試験審査が減点が20点までです。
- 第一課題カッティング(20分)…スタイル構成・技術条件・留意事項・作業上のポイントなどの細かな課題があります。
- 第二課題セッティング…ワインディング(20分)/オールウェーブセッティング(25分)を選択。(回によって異なります)。スタイル構成・留意事項など細かな課題があります。
- 衛生実技試験審査…【動的審査】衛生面・安全面共に気を付けて施術できているか。【静的審査】身だしなみ・用具類は適しているか。【確認的審査】使用した物の衛生処理が出来ているか。
技術力とは関係のない部分が採点のポイントに含まれているので、事前に頭に入れておくことが必要です。
アシスタント期間
美容室に勤め始めてからアシスタント期間は1~3年と言われています。店舗の規模やシステムによっても期間は違ってくるようです。
例えば大規模でチェーン展開しているような美容室の場合、アシスタント期間は長い傾向にあります。その理由は、既にジュニアスタイリストやスタイリストがたくさんいるからです。
しかし店舗の移動などでスタッフの入れ替わりがあるので、ランクアップのチャンスも多くなります。
そして中規模の美容室は、アシスタント期間が短めです。大規模同様スタイリストもいますが、ジュニアスタイリストが少ない店舗が多いようです。
そのため、フリーのお客様に入るチャンスが多い分アシスタント期間が短くなります。
最後に個人店にアシスタントで入社した場合、かなりアシスタント期間に差があります。お客様は来店するのにスタイリストが足りないパターンと、お客様の大半がオーナーもしくは店長の顧客である場合があります。
早めにスタイリストとして仕事をした方が良いかどうかは個人差がありますが、年数の違いはあれど学ぶ内容は大きく変わりません。
ジュニアスタイリスト期間
お客様を担当させてもらうための勉強期間になります。専門学校でカットは習いますが、その技術力ではお客様への施術には入れません。
専門学校では基本になる用語・ハサミやコームの使い方、そして人の頭は写真のように平面ではないことを学んできます。
そして専門学校での基礎知識を応用し、ウィッグやカットモデルで練習していくのがジュニアスタイリストです。
一人前のスタイリストになるために仕事をしながら色々なスタイルや施術を学んでいくので、最も忙しい時期でもあります。
しかしスタイリストの先輩からのフォローが受けられるうちに、たくさん学び失敗も経験しておいた方が良い時期です。
その経験こそがスタイリストになり活かされるからです。
美容師に向いている人はどんな性格?
「器用じゃないから美容師には向いていない」と耳にすることがあります。しかし、美容師に向いているかどうかに手先の器用さは関係ありません。
美容師に向いている方の性格は
- 美容やファッションへの探求心が強い
- 根気よく学び続けられる
この2つの特徴が挙げられます。
詳しく説明していきたいと思います。
美容やファッションへの探求心が強い
美容師はステキなヘアスタイルを提案・創作し、お客様に喜んでもらう仕事です。ですから、新しい美容やファッションの情報収集は欠かせません。
美容師の中に「また髪型変えたの?」「またカラー変えたの?」「来るたびに変わっているよね」そんな風に、お客様から声をかけられる方がいます。
そんな美容師の多くが研究熱心です。常に「これはどうなってるのか」を考えているのですが、それは自分のためだけではありません。
もしお客様からオーダーがあった時に「できません」と断ることがないよう、常日頃からアンテナを巡らせているのです。
そして美容師の仕事はお客様の要望に応えることが一番ですが、いつも同じオーダーをされるお客様も「変わりたい」と思っていることがあります。
「いつもと同じで」そんな気持ちを変える提案ができるのも、美容師ならではの特権ではないでしょうか。
したがって常に変化を楽しむ事ができる方、変化を楽しんでもらいたいと思える方は美容師に向いていると言えるでしょう。
根気よく学び続けられる
美容師の仕事の待遇は、他の職種に比べて決して良い方ではありません。だからこそ、未来の自分を想像する必要があります。
例えば長い拘束時間に平日休み、休日の講習になかなか上がらない収入…何を目的に頑張っているかを明確に出来ないと継続は難しいです。
そして、お客様に喜んでもらうための技術の向上は想像以上の努力を要します。そこで重要になってくるのがやはり根気です。
筆者の美容師の後輩に負けず嫌いな方がいました。先輩に注意されては泣き、同期に仕事を取られては泣いていた後輩ですが翌日には笑顔で出勤してきます。
後輩は悲しくて泣いたのではなく、自分が出来なかったことが悔しくて泣いていたのです。失敗しても繰り返しても、根気よく頑張った後輩はスタイリストの仲間入りを果たすことができました。
美容師の仕事をしていると、自分が思ったように仕事が出来ない事があります。しかし技術者というものは、そもそもが常に難問と向き合い考えるものです。
したがってスタイリストになっても学びは継続するため、根気は必須と言えるでしょう。
美容師になるために必要な能力とは?
美容師になるために絶対に必要な能力はコミュニケーション能力です。
コミュニケーション能力はお客様と仲良くなるために必要なのではなく、心を開いてヘアに関する悩みを話してもらうために必須になります。
実はこのコミュニケーション能力を勘違いしている人は多く「お客様を楽しませる力」とだけ思っている方がいるようです。
しかし美容師に必要なコミュニケーション能力は「信頼してもらい悩みを聞き出す力」になります。
初めて施術させていただくお客様は、特に緊張しています。そのため「髪が多くて扱いにくい」このような悩みまでは打ち明けてくれますが、そこから先がなかなか聞き出すことが難しいです。
実は悩みを抱えた多くのお客様は、既に色んな美容室で「できない」と言われています。そんな経験から「言っても思い通りにはならない」と諦めている方が多いようです。
例えば「多くて扱いにくい髪」その先が重要になります。
- 「多くて扱いにくい髪」をいつもはどんなスタイリングをしているか
- 「多くて扱いにくい髪」で、今までどんなヘアスタイルにチャレンジしたことがあるか
つい好みのヘアスタイルを聞くことに力を入れてしまいがちですが、何度も「できない」と言われたお客様は簡単には心を開いて話してはくれません。
まずはコミュニケーションを取りつつ悩みに共感し信頼してもらうことが大切です。そしてお客様の要望に近づけ、喜んでもらえることで美容師としてのやりがいも生まれてきます。
適正がなくても美容師になれる?重要なのは努力すること!
コミュニケーションなどの能力は経験で身についていくものでもあります。ではコミュニケーションが苦手な人は美容師に向いていないのか…そんなことはありません。
しかし努力は必要です。
例えば、指名客の多い先輩のカウンセリングに耳を傾けるだけでも、とても勉強になります。指名客の多いスタイリストはなぜ指名されるのかを考えてみましょう。
技術力はもちろんですが、お客様の要望を聞き出すことが得意なはずです。そして何よりもお客様の立場に立ち、考えることができるのです。
きっと、そのスタイリストも最初からできたわけではありません。たくさんの経験を積むことで、少しづつ出来るようになります。
技術もコミュニケーション能力も最初はゼロで良いですが、勝手に身についていくものではありません。日々努力あるのみです。
しかし、努力し続けることは難しいと思う方もいるのではないでしょうか。
筆者は「お客様に笑顔になってもらいたい」そう思い、頑張ってきました。自分のためよりも、人を喜ばせたいと思う方が継続しやすかったように思います。
その思いは、いつか指名の数や売上にはっきりと反映されていくでしょう。
美容師の魅力とは?なってよかったと思う瞬間!
美容師の魅力と言えば「好きなヘアスタイルができる」「かっこいいと思われる」等がありますが、筆者が美容師になって良かったと思う瞬間はお客様に「ありがとう」と言ってもらえた時です。
美容室側が「ありがとうございます」ということが多い中、お客様から感謝の言葉を頂くことがあります。
- ステキなヘアスタイルにしてくれてありがとう
- 明るい気持ちにさせてくれてありがとう
このような言葉を聞くと遅くまで練習している事や、休日を返上しての講習も無駄ではなかったんだと思えます。そして、この言葉を聞くためにまた頑張ろうとも思えます。
もちろん自分の技術の向上のために頑張っているのですが、その先には喜んでくれるお客様がいるのです。
これを美容師になったメリットと言うかは分かりませんが、誰かに感謝されることは素晴らしいと思います。
もし美容師という道を選んでいなかったら、こんなにもたくさんの「ありがとう」をもらえなかったかもしれません。
ここまでくる道のりは長かったですが「ありがとう」を聞くたびに、美容師になって良かったと思います。
こんな人は美容師に向いていないかも!
努力でどうにかなるものもあれば、ならないこともあるのが現実です。
体質的に美容師に向いていない
美容師の職業病とも言われているのが【手荒れ】【腰痛】です。もともと肌が弱かったり、腰痛持ちの方は美容師の仕事が向いていない可能性があります。
手荒れ
アシスタント期間に特に悩まされるのが手荒れです。お湯・シャンプー・薬剤・温風により手の油分やバリア機能は低下し、もともと肌の弱い方はすぐにひび割れがはじまります。
筆者の美容師の友人は手荒れの傷から細菌が入り、腫れて手が握れなくなりドクターストップがかかり美容師を辞めました。重度の手荒れは環境を変えなくては治らないからです。
そしてもともとアトピーだった後輩は症状が悪化し、首の方まで症状が出始めました。やはりドクターストップがかかりスタイリストを諦め、美容室のレセプションとして働く事になりました。
どんなに美容師という仕事が好きで頑張っていても、体質的にどうにもならない事があるようです。
腰痛
美容室に働き始め、慣れない立ち仕事にシャンプーなどの無理な体勢から腰痛を訴える方は少なくありません。
しかも痺れなどから、日常生活に支障が出てくるケースもあります。しかし、時代と共に腰痛の一番の原因であるシャンプー台は大きく変化しました。
サイドシャンプーからバックシャンプー、さらに施術者が座ってシャンプーするものまで登場し、美容師が腰痛で悩まされることは軽減されたようです。
しかし長時間の立ち仕事は美容師には必須ですから、もともと腰痛持ちの方は普段から筋肉を付けておいた方が予防になります。
条件的に美容師に向いていない
美容師は他の職業と違う部分が多くあります。その中でも【休日】【給料】に求める条件が厳しい方は、美容師に向いていないかもしれません。
休日
美容師の休日は、土日・祝日は忙しいため基本的に平日のみが多いです。そして週休2日もらえる美容室も増えつつありますが、まだまだ少ないようです。
多くの美容室が休日は5~7日程度になります。そして有給は労働基準法の改正により年間5日以上とされていますが、歩合制の美容室が多いためあえて休まない美容師も少なくはありません。
ちなみに一般サラリーマンの平均休日120日に対し、美容師の平均休日90日です。本当にスタイリストになりたいと思う方であれば、休日の少なさも気にならないでしょう。
しかし休日をしっかりとってプライベートを楽しみたいと思う方には、条件的に美容師は向いていないかもしれません。
給料
一般サラリーマンの平均年収約432万円に対し、美容師の平均年収は約316万円です。100万円以上の差はボーナスの有無が大きく影響しています。
時給換算すると非常に安い賃金で働いていることになる美容師ですが【将来的に独立し自分の店が持てる】【フリーランスとして自由に働ける】など雇われない自由を手に入れることが可能になる仕事です。
しかし、拘束時間のわりに給料が低いことは否めません。したがって最初から高い給料を求める方には、条件的に美容師は向いていないかもしれません。
精神面が強くないと美容師に向いていない
美容師になるには強い精神面がないと、長い下積み期間中に心が折れ挫折してしまうことが多いです。
なぜなら、常に学び、常に壁が現れ、常に考え続けるからです。20年以上経験のある筆者も日々考え続けています。
それは美容師という仕事が、同じことを繰り返す仕事ではなく常に違う仕事をしているからです。
例えば1日に10人のお客様をカットしたとします。同じカットでも、同じ仕事をするわけではありません。
同じお客様を10回カットした時も同じです。同じ施術を繰り返すことが絶対にないからこそ、常に考え続けます。
すなわち美容師はゴールがないと考えるのが正解かもしれません。
したがって終わらない学びに耐えるだけの精神力がない方は、美容師に向いてないかもしれません。
しかし長年学んでいると最初の頃とは違い、学びは新たな発見・チャレンジになってきます。そこに楽しさを見いだした瞬間、美容師の向き不向きは大きく変わるでしょう。