美容師の働き方・年収・技術
何歳まで?美容師として働ける年齢と40代定年説について徹底解説!
2021.05.28 UP
美容師として働ける年齢は何歳まで?
結論から言うと、美容師免許には特に年齢制限は設けられていません。したがって何歳になっても、美容師として働くことは可能です。
突然ですが、みなさんは吉行あぐりさんをご存知でしょうか?
1997年のNHK連続テレビ小説『あぐり』で田中美里さん演ずる、主人公のあぐりは実在する美容師でした。
1907年に岡山で生まれ、2005年の98歳まで現役美容師として活躍していたのです。日本の美容師免許保持者の中で最も高齢だったと言われています。
もちろん自分でお店を開業し、自分のペースで仕事をしていました。しかし、一般的な定年退職の年齢が60~65歳です。
吉行あぐりさんの美容師という仕事に対する思い入れの強さを、感じずにはいられません。
このように美容師は本人に働く意欲があり、お客様からの要望があれば何歳になっても働くことが出来る職業なのです。
30代スタートも可能?美容師は何歳までなれるのか
美容師免許に年齢制限がないのですから、30代から美容師を目指すことももちろん可能です。もっと言えば、何歳でも可能という事になります。
筆者が専門学校に通っていた時、夜間クラスで20代の生徒と一緒に美容師を目指し学んでいた50代の方もいました。現在では、他の仕事をしながら通信教育で美容師免許を取得する方も少なくはありません。
ただし【美容師免許を取得する=美容師になった】ではないところがカギになってきます。
実際にお客様に施術できるようになることを【美容師になる】というのであれば、若いに越したことはありません。なぜなら年齢と共に、記憶力や体力面でつまづきやすくなっていくからです。
若い頃に覚えたものは身体が覚えてしまっているので忘れませんが、歳をかさねていくと簡単にはいきません。
簡単に言うと子供の頃に覚えた自転車の乗り方は大人になっても忘れませんが、自転車に乗れない大人が乗り方を覚えるには倍以上の時間を要します。
そして失敗に対する恐怖を克服することも、若い方が克服しやすいのです。
だからと言って30代で美容師を目指すことが難しいのかと言うと、そうではありません。
何歳になっても「美容師になりたい」という強い意志と、諦めない気持ちを持ってさえいれば何歳でも美容師になるチャンスはあるのです。
美容師40代定年説ってホント?リアルな現状を解説
近年では【美容師40代定年説】という言葉を耳にしますが、本当なのでしょうか。
厚生労働省による【令和元年 賃金構造基本統計調査】によると、現役で働く理美容師の93.6%が20~40代という結果が出ています。
という事は93.6%が50代になる前に離職しているということです。
確かに美容室で50代以上の美容師を見かけることは減ってきました。新しい美容室を覗いても20~30代の美容師が多いように感じます。
状況を見る限り【美容師40代定年説】もあながち嘘ではないように思えますよね。
【美容師40代定年説】が囁かれる要因は2つ考えられます。
- 男性美容師の離職年齢
- 若いスタイリストとのジェネレーションギャップ
詳しく解説していきたいと思います。
男性美容師の離職年齢
厚生労働省による【令和元年 賃金構造基本統計調査】によると、男性の美容師の平均年齢は32.6歳で30歳になる前に離職する方も少なくはないのです。
離職の大きな理由が賃金の低さでした。美容師の賃金が一般の会社員に比べて低いことを、知らない方は少ないでしょう。
それが、なぜ30代で離職を考える方が増えるのでしょうか。これには結婚などのライフイベントが大きく影響していたようです。
厚生労働省の調査による平均初婚年齢は男性31.1歳、女性29.4歳です。ということは30代前から結婚を考え始めるという事になります。
そこで男性にとって重要になってくるのが「家族を養っていけるのか」ではないでしょうか。
美容師の平均年収は約316万円、月収にすると約26万円です。しかも社会保険や退職金制度など、先々の保証がない美容室が多いので更に収入は低くなります。
夫婦二人なら、共働きで良いでしょう。しかし子供が生まれ、女性が働けなくなったとしたら…。そんな将来への不安から離職を考える方も多いようです。
そして元々転職を考えていた方も30歳を過ぎると不利になることから、早めに離職することも少なくはないようです。
若いスタイリストとのジェネレーションギャップ
40歳を迎える頃に多くの美容師が感じているのが、若いスタイリストとのジェネレーションギャップです。
筆者が美容組合に加入していた時、周りのオーナーは若くて40代でしたが上は70代の方がほとんどでした。そこでも若い美容師とのジェネレーションギャップは問題視されていましたが、美容室でも同様です。
筆者も組合に参加し、自分の母親と変わらない世代の方たちと仕事の話をすることには少し違和感を感じていました。一緒に働くわけではないのに違和感を感じるのです。
そして自分が40代になると、今度は20代の美容師と仕事の話をしていて違和感を感じました。
同じ美容の仕事をしていながら、流行りは変わりワークスタイルも変わり、考え方そのものが変わってきます。そこで柔軟に考えられれば、ジェネレーションギャップも感じないのでしょう。
しかし多くの方が「私の時は…」と考えることが多いようです。
そして気が付くと若いスタイリストに月間売上を抜かされ、いづらさを感じ離職に繋がっていくのでしょう。
【美容師40代定年説】は、40代前後が美容師のターニングポイントであることから浮上してきたのだと考えられます。
教えて!独立・開業するべきタイミングとは?
そのまま雇用され続けるか独立し開業するか、選択を迫られるのが30代のようです。
実際に、美容室を開業する平均年齢は【男性31歳】【女性35歳】でした。約10年以上のキャリアを積んでから開業していることになります。
しかし、実際の開業のタイミングは様々です。25歳で開業した方もいますし、40代になってから開業する方もいるでしょう。
最終的に自分の心と資金の準備が整えば、その時があなたの独立・開業のタイミングです。
筆者の独立・開業の体験談
筆者が美容室を開業したのは36歳です。独立の理由は【ずっと働ける場所が欲しい】そんな願いからでした。
「子供の頃からの夢だった」と言えば響きが良いのですが、実際は働く場所(採用してもらえる美容院)が年齢と共に減っていたのです。
求人に【年齢不問】と書かれていましたがなかなか採用してもらえず、【若いスタッフで元気いっぱいの職場です】と求人に表記されている美容室がたくさんありました。
雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されました。
引用先:厚生労働省
この法律改正により例外はありますが、基本的に求人での年齢制限が出来なくなったのです。しかし、美容室の客層にあったスタッフの年齢がある事も理解できます。
そして36歳にもなると、オーナーよりも年上になってしまうこともあります。年上のスタッフを雇うことは、色んな意味で大変であることも察しがつきました。
そんな時、大きな不安に襲われたのです。「次の美容室で長く働けなければ、今度こそ働く場所がなくなる」そう思いました。ここが筆者のターニングポイントだったのです。
筆者のように働く美容室がなくなり、独立・開業を考える方は多いと思います。しかし美容室は独立・開業よりも、経営し続けることが難しいです。
その理由は多すぎる美容室店舗数に人口の減少と言われています。お客様獲得のための価格競争を余儀なくされ、小さな美容室は簡単に閉店に追い込まれます。
実際に美容室の開業から1年で50~60%、3年以内には90%、10年以内には95%が閉店しているのです。数字を見ただけでも、経営し続ける難しさを感じることができるのではないでしょうか。
このことから技術はもちろん、十分な経営知識を学んだ後に独立・開業がベストなタイミングと言えるでしょう。
40代からの美容師の働き方とは?
40代ともなればお客様とのお付き合いも長くなっていると思います。そこで40代の美容師の働き方としておすすめなのが【悩みの共有】していくことです。
美容師の顧客年齢層を見ていくと、スタイリストと年の近いお客様が顧客になりやすい傾向にあります。という事は美容師が40代なら、お客様も40代前後が多いということです。
理由としては【話が合う】【価値観が近い】【好みを理解してもらいやすい】などが挙げられます。そして悩みも似ているのです。
例えば白髪や薄毛、髪質の変化で今までのヘアスタイルがしっくりこないなど、40代にはたくさんの悩みがあります。
この悩みを20代の美容師に理解が出来るかと言うと、知識上では理解できますが現実味がないのです。
実際に40代で経験してみなければ理解できない悩みを共有し、そして一緒に解決に向かって行くことができるのは同年代ならではないでしょうか。
筆者が担当させていただいているお客様の悩みを聞いていると、まさに筆者の悩みと一致することが多いです。
そんなこともあり、筆者が試す商品は衰え始めた髪を扱いやすくする商品ばかりです。自分で試してみることが一番信頼性があることは、商品の売れ行きで良く分かります。
【美容師40代定年説】があるように、40代ともなるとアクティブに動くことは難しくはなります。しかしお客様への心遣いや悩みを共有することで、まだまだ美容師としてのやりがいを見出すことが出来そうです。